【乙字湯とヘモゼットとの違いについての考察】
今回は「痔疾」と「デリケートゾーン」の話をいたしましょう。
いずれも例え薬局であっても、なかなかご相談しにくい課題ですね。
自分には関係ないと思われるお客様はこのままスルーです。
また、今は痔をお持ち、又は過去は出産などで一時的に痔疾。・・という病歴をお持ちでしたら、ぜひお読みください。
ためになるか、どうかは保証できませんが、少なくとも、こういう製剤の使用もアリ・・とご記憶頂けると幸いです。
【痔には乙字湯の時代が次第に変わってきた昨今】
当店では店主の私が「痔もち」の傾向があるため、過去はいろいろと、メーカーや製剤の選別を繰り返し、我が身を持って試してきました。
現在のところ、三和生薬が製造の「サンワ乙字湯Aエキス細粒」がベストと考えています。
以前と比較して近年内容的に「Aシリーズ」にリニューアルしまして、実際に使ってみると旧製品と比較して格段に進化しているなぁ~と感じております。
こちら
従って当店における漢方相談における推奨品としております。
しかし・・・現在もなお、人気があるものの、一方では今一つ効き目が・・・と訴える患者様も次第に多くなってきたのではないでしょうか。
【時代の流れ、環境の変化、現代人の体質変化・・】
痔はどちらかというと冬によくご相談をお受けしてきた過去があり、やはり冷える時期、特に冬の厳寒期に少しでも便秘するとてきめんに痔が再発しやすくなります。しかし、気候の変動というものがこの半世紀の間に起きてきて、全てが異常気象のせいとは言いませんが、少しずつ病態にも変化があるようです。
さて各ご家庭では多くはウォッシュレットなどを完備され、痔の対策の一助となればと・・しかし、これも使用し過ぎると皮膚粘膜の弱い方はかえってデリケートゾーンや肛門部がアレることもあるようです。粘膜の弱い方の使い過ぎや、誤った使用方法には十分に注意を必要とします。誤解を生じるといけませんので重ねて書きますがウォッシュレットがいけないという意味ではありません。
痔が夏場に再発した。。よく耳にします。
現在ではほとんどオールシーズンはエアコン完備の時代となりましたので、冬も夏も関係なく痔の傾向のある方は季節感無く、再発もやむなしということでしょうか。最近は男女ともに「冷え体質」は非常に多く、重ねて夏の酷暑の時期には薄着でかつエアコンで冷やしすぎますと、痔は確実に悪化いたします。
近年になり、特にOA業務に携わり、終日キーボードと「格闘」している方々には、腰痛症と痔疾のご相談が多いのには驚かされます。当店も開店してから30年近く経過しましたが、当時の相談者の体質と現代人とは微妙に違うことがわかります。
とにかく男性も女性も冷えていて、何らかのアレルギーを有し、極めてデリケートです。
世代の進化は接客を何万人と長年続けていると、ひしひしと感じる昨今です。
【乙字湯の構成を再度考える】
さて今までの「乙字湯(おつじとう)」の構成生薬を再度確認してみましょう。
以下、6味で構成されております。
●当帰(とうき)●柴胡(さいこ)●黄ごん(おうごん)●甘草(かんぞう)●升麻(しょうま)●大黄(だいおう)
主治としては痔疾全般、脱肛痛、下血腸風、前陰痒痛が挙げられます。
作用機序としては
★柴胡・升麻・・・脱肛性内痔核と脱肛を引き上げる(昇提作用)
★甘草・・・肛門括約筋の痙攣を止め、脱出した痔核や肛門を還納し易くする。
★当帰・・・鬱血を除き、痔核の腫れを治す。
★柴胡・黄ごん・升麻・・・消炎作用、湿熱を除く、肛門周囲・外陰部の搔痒症や湿疹を改善する。
★升麻・大黄・・・止血作用。
乙字湯はこのように中間型の痔の脱出に対して用いる代表的方剤として君臨してきました。今から30年ほど前にはこの乙字湯の症例が非常に多かったのですが、現在ではそれほどは多くはない。むしろ前述のように時代の変革により肛門周囲炎や、陰部周りの原因不明の搔痒症の方が増加しています。あくまでも当店レベルでの話です。
【肛門周囲炎と外陰部搔痒症の併発型が多い】
事務を専業とする女性(50代)が、人の紹介により漢方相談に訪れました。病院3軒、漢方薬局が当店を含めて4軒目であると伺いました。仕事中に陰部周囲に独特の痒みを覚え、仕事に集中できないことも。
本来は竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)でと・・前の3軒の薬局さんで処方されていました。難しい選択肢です。。私も初回でしたら処方したかも知れませんね。しかしよく聞くと体質的に痔の要素も十分に有している方でした。当人は気持ち的には半ば諦めてはいたものの、問診するとずばり適証であるため『乙字湯』をお渡してお帰り頂いたことがあります。
生薬の柴胡・黄ごん・升麻の配合で当人にはフィットし、1ヶ月を待たず完治してしまったのです。肛門周囲炎と外陰部搔痒症が同時に治癒した症例であったと思います。恥ずかしい場所の疾患のため、なかなか医療機関や薬局に相談しにくく、この1年半の悩みは一体何だったんだろうと、とても感謝されました。
そして、このような症例が年々増加しているのも事実です。
このようなわけで、乙字湯は用い方によっては適応範囲が広く、痔核の腫脹を取り除くだけには留まらないと感じています。
【痔疾は、さらに重症例も多くなっている】
時代的には痔核の炎症、患部からの出血も併発している重症例が多い。近年になり、乙字湯の単体だけではなく、合方加減等は無いものかと探したところ・・ありました!
和歌山県の剤盛堂薬品から発売されている『ヘモゼット』という薬。(内服薬)
現代調の洒落た商品名ではありますが、実は一般漢方処方である『乙字湯』の変方なんですね。
乙字湯(6味)に、紅花、陳皮、桃仁、牡丹皮、黄柏、蒼朮の6味を加味したものです。
つまり、乙字湯をベースにしてさらに鬱血の除去と清熱効果を期待しての加味方で強化した生薬製剤と言えましょう。
何年か使用し、当初は『乙字湯』の患者の中でも症例こそ少ないのですが、『乙字湯』だけでは今一とお話された時にはご紹介するようにしてきました。
【あらためてヘモゼットのご紹介】
最近は、『乙字湯』の単体ではなかなか効いてこない症例が多いのです。
まさに時代の流れを感じますね。そこでこの場合は「ヘモゼット」です。
剤盛堂「へモゼット」は、エキス散+原末で仕立てた散剤であり、添加物は一切含有していません。
●包装は60包(20日分)、500g徳用ボトル(166日分)の2アイテムが発売されています。
【用法・用量】は1回量は内容が濃いため、1gと少量で済みます。
1日3回(朝・昼・夕)を食後にぬるま湯で服用です。(食後服用にご注意)
【効能・効果】
脱肛、裂肛痔(きれ痔)、外痔核(いぼ痔)、内痔核(はしり痔)
【ご注意】
●大黄が含有のため、他の漢方(大黄含有製剤)もしくは他の瀉下剤と重複しないようご注意ください。
●妊婦又は妊娠している可能性のある人。又は授乳中の場合は本剤服用はご遠慮頂いております。
【リスク分類】
第二類医薬品です。
【ヘモゼットの応用】
例えば、『乙字湯』を服用しているにも拘わらず、脱肛を頻繁に繰り返し、激痛のため痙攣性緊張が強く、還納(脱肛を元に戻す)そのものが極めて困難な場合があります。
その場合の方法論として、過去は還納させるに15分ほど前に芍薬甘草湯を服用させておくと括約筋の緊張がとれてスムーズに還納しやすい。
但し、甘草の含有量が総じて多くなるため、そう頻繁にはこの方法はとれない。匙加減も必要となり、投薬方法も素人にとっては煩雑となり、あまり一般的ではありません。
そこで・・このように悪化した症例には概ねこの「へモゼット」単独で対応ができると思います。
私も過去は長時間運転を必要とする地方出張では随分と「へモゼット」で助かった経験があります。
このように「へモゼット」は万が一の時に対症療法的にも使用でき、さらに長期の継続投薬で体質改善、すなわち原因療法的にも応用がつく、便利ツールとも言えます。
【ヘモゼットのご購入】
(ヘモゼットは剤盛堂からの取り寄せ品のため発送まで3~4営業日を頂いてます)
カートカテゴリーは
第2類医薬品⇒「剤盛堂の漢方薬」⇒「は行」⇒「へモゼット」です。
【まとめ】ざっくりとまとめました。
※「乙字湯」は従来からの痔疾以外に肛門部周囲炎、外陰部搔痒症(湿疹にも)に応用ができる。
※基本は今なお「乙字湯」ではあるが、時代の流れ、食生活や環境変化により、「乙字湯」が奏功しない症例も増加してきた。この場合は乙字湯の変方「へモゼット」で試してみる価値はある。
ヘモゼットの概要
ヘモゼット
医薬品区分 一般用医薬品
薬効分類 内用痔疾用薬
承認販売名
製品名 ヘモゼット
製品名(読み) ヘモゼット
製品の特徴
使用上の注意
■してはいけないこと
(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用が起こりやすくなる)
授乳中の人は本剤を服用しないか、本剤を服用する場合は授乳を避けること
■相談すること
1.次の人は服用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
(1)医師の治療を受けている人。
(2)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(3)体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)。
(4)胃腸が弱く下痢しやすい人。
(5)高齢者。
(6)薬などによりアレルギー症状を起こしたことがある人。
(7)次の症状のある人。
下痢
(8)次の医薬品を服用している人。
瀉下薬(下剤)
2.服用後、次の症状があらわれた場合は副作用の可能性があるので、直ちに服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
[関係部位:症状]
皮膚:発疹・発赤、かゆみ
消化器:食欲不振、吐き気・嘔吐、はげしい腹痛を伴う下痢、腹痛
3.服用後、次の症状があらわれることがあるので、このような症状の持続又は増強が見られた場合には、服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
軟便、下痢
4.1ヵ月位服用しても症状がよくならない場合は服用を中止し、この文書を持って医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
5.他の医薬品等を併用する場合には、含有成分の重複に注意する必要があるので、医師、薬剤師又は登録販売者に相談すること
効能・効果
脱肛、裂肛痔(きれ痔)、外痔核(いぼ痔)、内痔核(はしり痔)
用法・用量
次の量を食後に、コップ半分以上のぬるま湯にて服用して下さい。
[年齢:1回量(容器入りの場合):1回量(分包品の場合):1日服用回数]
大人(15歳以上):1g(添付のサジ1杯):1包:3回
15歳未満:服用しないこと
用法関連注意 用法・用量を厳守すること。
成分分量 3g又は3包中
エキス 1.6mL(固形物0.28g) (カンゾウ0.2g・コウカ0.8g・サイコ0.8g・ショウマ0.8g・ダイオウ0.2g・チンピ0.3g・トウキ0.4g・トウニン0.4g)
エキス 0.08g (カンゾウ0.333g・ダイオウ0.2g・ボタンピ0.4g)
オウバク末 0.24g
ソウジュツ末 2.4g
添加物 なし
保管及び取扱い上の注意
(1)直射日光の当たらない湿気の少ない涼しい所に保管すること。
(2)小児の手の届かない所に保管すること。
(3)他の容器に入れ替えないこと。(誤用の原因になったり品質が変わる。)
(4)分包品において1包を分割した残りを服用する場合には、袋の口を折り返して保管し、2日以内に服用すること。
製造販売会社 剤盛堂薬品(株)
会社名:剤盛堂薬品株式会社
住所:〒640-8323 和歌山市太田二丁目8番31号
販売会社
剤形 散剤
リスク区分等 第2類医薬品