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ニンジン(白参・ハクジン)の価格と「人蔘の話」

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ニンジン(白参・ハクジン)の価格と「人蔘の話」

薬剤師ぷろたん

先般、このトップページ記事で生薬「ニンジンの高騰」についてお話をいたしました。
会員さまをはじめ、多くのお客様からメールを頂きまして、感謝しております。
ご承知のように「人蔘」は実にポピュラーであり、かつ高級生薬として君臨する永遠の王者ではないか存じます。
ただ、高額高騰している「人蔘」であるだけに、お茶の間の話題から縁遠くなるのでは?と・・ここ最近は特に懸念している私です。

お問合せの多かった「白蔘(はくじん)原形」につきましては、そろそろ価格の方も落ち着いてきましたので、 本日、掲載させて頂きました。(とても高額で申し訳ないのですが・・。) 製品はウチダ和漢薬製品で、もちろん確かなモノです。

ウチダのニンジン(白蔘・ハクジン・中国)原形で、40gと100gの2種類です。
これらは「日本薬局方 人参」の規格品でして、第3類医薬品となります。

当店の「めいっぱい」の価格設定でございます。。。汗
ウチダの人参(白参)原形

kakaku1

 以下参考資料


「人蔘の話」

さて今日は、自身の記憶を辿り、頭の整理を兼ねてこの「人蔘」について記述いたします。
まとまり無い話しで恐縮ですが、お時間有る時にお読み頂きますと幸いです。

※ここからは、製品説明ではなく、あくまでも生薬・薬草に関する「人蔘の話」です。

【生干人蔘、白蔘、紅蔘とは?】

栽培により4~6年根を秋に採取し水洗後、ヒゲ根及び分枝根等の以下のように調整をいたします。

周皮を付けたまま乾燥した物を生干人蔘(きぼしにんじん)。
人参の細根を除いたものを軽く湯通ししたもの白蔘(はくじん)。
細根を残したまま、人参の根を蒸したものを紅蔘(こうじん)。

「日本薬局方」では「白参」と「紅参」は製法の違いだけで、効能などはすべて同じと考えているようです。

【人蔘の原産地とわが国における歴史】

人蔘(総称して御種人蔘:オタネニンジンとも呼ばれる)は、ウコギ科の多年草。

科:ウコギ科 Araliaceae
属:トチバニンジン属 Panax
種:オタネニンジン P. ginseng(パナックス、ジンセング)

原産地は中国の遼東から朝鮮半島にかけての地域といわれ、 中国東北部やロシア沿海州にかけて自生します。

いわゆる「朝鮮人蔘」、現在では「高麗人蔘(こうらいにんじん)」と呼ばれることが一般的のようです。
私的には「高麗人蔘」と言われてもピンとこないのですが。。

なお、実際には薬用のニンジンなので、私はついつい昔からのクセで店内で「薬用ニンジンは~」とか「この朝鮮人蔘がぁ~」とか言ってしまう・・・。
業界では「薬用」という言葉も日本国の薬事法の関係もあり、商業的にはあまり使用しないようですね。。
先日、当店田中店長から注意警告されました。。汗

但し、歴史の中での話や文献では「朝鮮人蔘」というワードは不滅です。こだわるようですが。(^_-)-☆


わが国における歴史は古く、なんと奈良・天平時代に中国北部の渤海国(ぼっかい)から日本に伝えられ、江戸時代には幕府管轄で限定的に栽培されるようになりました。

「御種人蔘」の名は、8代将軍徳川吉宗が対馬藩に命じて朝鮮半島で種と苗を入手させ、試植の後各地の大名に「御種」を分け与えて栽培を奨励したことに由来するそうです。この件に関してはのちほど「吉宗こぼれ話(プロたん考察)」で少し述べさせて頂きます。

家康公の影響もあり、歴代将軍はことのほか薬草国産化に力を注ぎ、3代家光、5代綱吉、8代吉宗が特に著名ですね。小石川薬草園(現、東京大学大学院理学系研究科附属植物園)及び日光の薬草園など。

江戸幕府と薬草、人蔘との関わりについての小生過去の愚稿はこちら

「御薬園(会津若松市)の散策路 行くべし!」→ https://www.protan2.com/protan2/archives/3027

「東照神君(家康公)は生薬がお好き」→ https://www.protan2.com/protan2/archives/3004

さらにお時間あったら・・・・。お読みください。
「徳川家康と調合薬」→ https://www.protan2.com/protan2/archives/2997

【吉宗こぼれ話(プロたん考察)】

8代将軍徳川吉宗の時代、繁栄の絶頂にあった対馬藩(正確には対馬府中藩)は朝鮮から江戸などに「人蔘座」という売り場を設置し、朝鮮人蔘を独占的に売って莫大な利益を得た。(当時の対馬は特命を受けて朝鮮釜山プサンにある倭館の運営をも任せられていた。)
人蔘座の前には朝鮮人蔘を求める人が長蛇の列を作ったという。
これに着眼した吉宗は、『東医宝鑑』に掲載されている人蔘に深い関心を持ち、対馬藩を通じあくまでも「朝鮮薬材調査」という名目で当時「持ち出し禁制」となっていた人蔘の種と苗を朝鮮から入手した。
当時朝鮮からの人蔘輸入に使用していた大量の銀(人参代往古銀など)流出を防ぐため、密かに人蔘の国産化を図ったという説がどうも有力なようである。

【市場シェアと栽培について】

聞くに現在、人蔘市場全体の8割近くが韓国と中国で栽培されているそうです。さらに全体から見れば甚だ3%と稀少ではありますが今日の日本でも良品を栽培しています。

なお中国産では遼寧省、吉林省、黒龍江省の東北三省が有名で、特に吉林省産の人蔘は品質が良いことが知られており、別名「吉林蔘」と呼ばれています。

吉林省長白山産の人蔘は最高品質と言われ。肥沃な黒土地帯。加えて気候が寒冷多湿であり、朝鮮人蔘には最適の環境がゆえんとのこと。
「吉林参」の最高級品(野生品)の最終取引価格を耳にしましたが、私などとてもまともに購入できる金額ではありませんね。(車が買えます。。滝汗)
このため、甚だ迷惑な話ですが、偽物・贋作も多く出回っており、素人がやたら手を出さない方が無難というものです。正直申して私にも判りません。。

◎メイドインジャパンの製品

忘れてならないのがわが国における人蔘栽培。とても頑張っています。
その詳細歴史は長文になるので、割愛しますが、ざっくりと言いますと前述の江戸幕府の人蔘奨励から端を発した由緒ある土地が今だに光っています。

現在の日本国産地として有名なのがなんと言っても長野県。
特に東信地区の佐久市は有名ですね。
さらに福島県は会津地方、島根県(大根島)そして北海道(一部)・・・と。
とにかく、丹精込めて気の遠くなるような、以下の通りの持久戦です。連作はできません。

◎栽培年数について.
・土作りは有機質を混ぜながら1年間実施。
・種を発芽させ11月頃に蒔く。
・2年後の秋に優良根を残し間引き。
・4年後の秋に優良根を残しさらに間引き。
・5年~6年後で収穫する。
・6年超えてしまうと腐ることが多い。

薬剤師ぷろたん
《余談》
私がこの中で特筆するのが、小規模ながらも頑張っている島根県の大根島で栽培された雲州人蔘。
過去の旅行で知ったのですが、この大根島の和製人蔘は大変優れていると個人的に思いました。
さらに余談になりますが、大根島は日本有数の牡丹と高麗人蔘の生産地として、いずれも数百年の歴史に裏付けされた産業遺産が残る地です。
土地柄もあり、牡丹の全国出荷と高麗人蔘への生産意欲は凄いものがあると感動した記憶があります。
ぽっかり浮かんだ小さな島で、のんびりと・・花がとても綺麗。幸せな気持ちになれますよ。日本庭園で有名な由志園があります。
昔の松江藩、御種人蔘の「人蔘方役所」のまさに名残。
松江方面を旅行された時に、ぜひ寄られるとよいと思います。
私も旅行中に山陰から舞鶴経由で帰途スケジュールには無かったのですが、この島があまりにも良かったので、当日は近くで1泊しちゃいました。

さて、話が脱線しましたが以下、最後に4種のニンジンについてまとめてみました。

1.【高麗人蔘(朝鮮人蔘)】
◎もともとは朝鮮の野生の人蔘が一番良いとされてきました。そのため、朝鮮人蔘と名が付けられました。
前述のように現在では、中国の東北三省が有名です。
最近の韓国でも「高麗人蔘」と呼ばれているようですが、この名称由来は日本からの「逆輸入」と言われています。

◎人参の中では補気作用が強く「補薬の王」と呼ばれています。
◎性質は「温」。

2.【西洋人蔘

◎日本ではまだ馴染みの薄い人参です。しかし、中国では日常一般的になっています。
◎性質は「涼」。これが高麗人参との大きな違いです。

3.【田七人蔘】

◎中国の雲南省から広西省にかけての高地でしか採取できない特産品です。「三七」「田三七」などの別名があります。
※現在、この生産地は「かんばつ」に数回見舞われ、さらに中国国内や韓国でのブーム(健康志向)も重なり、日本への素材供給不足が深刻化しています。

◎かつては「門外不出」で、別名「金不換」(お金に換えられない)とも呼ばれていました。
◎成分の田七ケトンが話題になっています。

4.【シベリア人蔘(刺五加・五加皮・五加参・エゾウコギ)】

◎過酷な環境の中においても強い生命力を持ち、そこに自生する植物を旧ソ連(ロシア)が発見したシベリア人蔘(エレウテロコック)。
ロシアのオリンピック選手が使用して話題になりました。

◎発見から歴史も浅く、人蔘と言っても「朝鮮人蔘」との類縁関係は薄いとされていますが、比較的に低コストのため新たなるパワー源として注目されつつあります。
◎エレウテロコックはご存知、医薬品ドリンク「ユンケル(佐藤製薬)」の一成分として採用。
◎性質は「温」、抗ストレス。
◎スポーツ選手の中で、静かなブーム。日本では北海道(アイヌ)で古くから愛用されてきました。(エゾウコギ)

以上、

(2014年7月22日 拙稿 プロたん)


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