過活動膀胱と漢方
過活動膀胱(かかつどうぼうこう)Over Active Bladder、略称OABは、膀胱の不随意の収縮による尿意切迫感を伴う排尿障害です。
病院の診療領域では泌尿器科に属します。
主に原因から以下2つに大別されますが、軽症の間質性膀胱炎などと極めて類似した症状でもあるため、当病名については論議を呼んでいるのが現状です。
・神経因性OAB
・非神経因性OAB
【病院での治療について】
(指導)
1.生活指導:水分過剰摂取の制限、カフェインの忌避
2.膀胱再訓練:排尿間隔を少しずつ延長させ膀胱容量を増加させる訓練法
3.骨盤底筋訓練
(薬物療法)
1.抗コリン剤
膀胱が収縮するときに、神経伝達物質の「アセチルコリン」が働く。過活動膀胱の原因となるアセチルコリンの働きを抑える「抗コリン剤」という薬の内服により、膀胱が過度に収縮するのを防ぐものである。
オキシブチニン(ポラキス、ネオキシテープ)
プロピベリン(バップフォー)
トルテロジン(デトルシトール)
ソリフェナシン(ベシケア)
フェソテロジン(トビエース)
2.選択的β3アドレナリン受容体作動薬
ミラベグロン(ベタニス)(※抗コリン剤特有の副作用が無く、最近処方が多い)
※β3受容体が刺激されることにより、膀胱が弛緩し蓄えられる尿量を増やす薬理を有する。
3.その他 患者により、抗うつ剤なども使用されることもある。
【よくある女性の排尿障害と骨盤底について】
よく婦人病のご相談の中で「骨盤底」についての話がでる。
ヒトは直立二足歩行するようになったので、骨盤の中にある膀胱・子宮・直腸などが、重力に引かれて下がってきてしまう。
重力に逆らって骨盤の内臓を支える構造が、骨盤底である。
結合組織や、骨盤底筋群という様々な筋肉でできている。
たとえば肛門挙筋という筋肉は骨盤底筋群のひとつであるが、肛門をきゅっと締めるときに収縮する筋肉である。
この筋肉は膣を締める機能もある。
お産のときの損傷や加齢によって骨盤底筋群がゆるんでしまうと、臓器の下垂感や排尿・排便の障害(尿や便が出にくい、残ってしまう、漏れてしまう)などの
困った症状が出る。
この症状は特に中高年に多い。
骨盤底筋群体操によって、ある程度鍛えることができる。ただし、正しいやり方をしないと、腹圧をかけていきんでしまうと逆効果である。
従って、当初は見よう見まねの我流ではなく専門家による指導を受ける必要がある。
最近の大きな病院では「骨盤底ケア外来」で、専門の看護師が指導していることが多い。
【女性の過活動膀胱について】
・トイレが近い(頻尿)
・昼間10回以上トイレに行く
・急にトイレに行きたくなり、間に合わない(切迫性尿失禁)
・夜間何度もトイレに起きてしまい眠れない(夜間頻尿)
・夜間3回以上トイレに起きる
・外出時には尿もれパッドを当てている
生活改善や、漢方薬の内服でよくなる可能性もある。
男性の過活動膀胱は、前立腺肥大に伴う夜間頻尿から由来することが非常に多いが、
女性の過活動膀胱は、検査では明らかな病変が認められず、原因を特定できないケースがあまりにも多い。
病診においても、エビデンスがあまり確立されていない面もあり、私のところにもご相談が近年多くなってきた。
婦人病相談の中で、以下2つに大別される。
・排尿異常の症状へ過度にこだわり心配する「心因性頻尿」
・加齢と筋力の低下による「腹圧性尿失禁」
「過活動膀胱ではないか?」と本人がお尋ねになることが多い。
医師からの診断なのか・・と伺うと、困ったことにネットで調べられたとか、友人から言われた・・が圧倒的に多い。
自身で勝手に思い込まず、まずは病院の専門医に診てもらい、検査もケースにより必要となる。
なぜなら、泌尿器だけではなく、背景に重大な病変が隠れている場合もあるからだ。
まずは病診が優先され、漢方薬にするかどうかはそれからのステップと言える。
(類似した疾病)
※以下も最近多い事例と言える。
【腹圧性尿失禁】
・咳をすると尿がもれる
・急に立ち上がったり、走ったときに尿がもれる
・尿や便が漏れるのが心配で、運動ができない
※俗的に「ちびる」とか言われている。
腹圧性尿失禁は、急に立ち上がった時や階段を上る時、重い荷物を持ち上げた時、
咳やくしゃみ、笑った時などに尿が漏れる病態である。
※骨盤底筋群体操でよくなる可能性がある。
※重症のケースでは稀に手術ということもあるのでご留意されたい。
【骨盤臓器脱】
・長い時間立っていると何か下がってくる感じがする
・トイレでいきんだときやお風呂で、股の間に何かふくらんでくるものを触れる
・尿や便が出きらず、残った感じがする
※慢性的な運動不足や肥満体の女性に多い。
※年齢的には、閉経後に急速に肥満体になられたご婦人に多い。
【漢方療法】
漢方療法については、この病名には「この処方」ということもなく、包括的に現在における本人の「証」を模索する。
体質、既往症、冷えているのか、又はその逆か、水毒は?お血は?と。※
舌の色、眼球の状況、皮膚・・・とキリがないが、「適証」であれば漢方療法も一定の効果をあげることもある。
※慢性的な水毒の介在が治癒を遅くしている例が実に多い。
【よく出る漢方処方】
※効果には個人差がある。
・清心蓮子飲
体力中等度以下で,胃腸が弱く,全身倦怠感があり,口や舌が乾き,尿が出しぶるものの次の諸症:
頻尿,残尿感,排尿痛,尿のにごり,排尿困難,こしけ(おりもの)
・補中益気湯
体力虚弱で,元気がなく,胃腸のはたらきが衰えて,疲れやすいものの次の諸症:
虚弱体質,疲労倦怠,病後・術後の衰弱,食欲不振,ねあせ,感冒
■高齢化社会の現代、最近は特に中高年に人気のある清心蓮子飲について簡単に述べてみる。
【清心蓮子飲(せいしんれんしいん)の使用目標】
神経質の傾向があり、とりこし苦労が多い方によく使われる。
ストレスや緊張によって生じる排尿のトラブル
・頻繁に尿意を催す、
・尿が出しぶる、
・排尿痛がある、
・排尿時に力がなく残尿感がある、
・疲れると尿が混濁する
・・などが使用目標となる。
【清心蓮子飲(せいしんれんしいん)の処方解説】
清心蓮子飲は、気虚(元気がない、機能低下なと)・陰虚(体に潤いがない)に伴う
虚熱(イライラ、煩繰など)の状態に使われる処方である。
従って清熱薬、滋陰薬、利水薬、補気健脾薬などで構成されている。
蓮肉・・・清心益腎作用。
麦門冬・・滋陰作用。
黄ごん・・上焦の熱を冷まします。
地骨皮・・虚熱を冷まします。
茯苓、車前子・・利水作用により尿の病変を改善する。
人参、黄耆、甘草・・気虚による倦怠感や機能低下の症状を改善。
蓮肉、茯苓・・安神作用があるので神経性の尿のトラプルを改善。
【お客様の健康相談について】
上記に関する「健康相談」には薬剤師、又は登録販売者までご連絡ください。
※受付が出ますので、「過活動膀胱の相談」とお申し付けください。
※薬剤師:遠藤指名につきましては、店舗での相談中の場合、折り返しお電話を当方からする形となります。
※お客様の機密は厳守します。
※長時間のご相談はできません。その場合には直接店舗でのご相談をご予約ください。
※病院受診中の方は、使用薬剤、お薬手帳など電話口にご用意ください。
※メモ用紙、筆記具を事前にご用意ください。お電話 0428-25-8682(東京都青梅市 店舗:薬のプロたん)
薬剤師直通 090-1653-9903