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腹水に分消湯や補気建中湯による漢方療法

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腹水に分消湯や補気建中湯による漢方療法

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さて、本日のテーマは「腹水」。つまり「腹腔内における体液貯留」です。
漢方医学では水毒として、利水。かつ、新薬の利尿剤にありがちな体力低下を来さないよう穏やかに効果を表します。
本日は、利水の漢方として、分消湯(ぶんしょうとう)と補気建中湯(ほきけんちゅうとう)をご紹介いたします。

【はじめに】

当店において、上記の2処方の使用頻度は高く、特に慢性的な大病を背負われた患者さんの胸水や腹水への対応として皆様にご紹介する例も多いかと思います。

そこで腹水の話になりますが、そもそも「腹水」への理解が必要です。

ご存じの方も多いと思いますが・・・あらためて。
腹水は、お父さんのビール腹(皮下脂肪)とは全く異質なものです。

【腹水って何だろう?】

先般、ご質問の多かった病院における「腹水」。
腹水が発現する要因が実に多岐、多科に渡り、なかなか一口には申し上げられません。

なぜ、どこに、どのような形で貯留するのか、先端医療による治療までの概略を以下のサイトで述べました。ご参考ください。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
腹水と、近年脚光を浴びつつある腹水濾過濃縮再注入法(CART)について

腹水と、近年脚光を浴びつつある腹水濾過濃縮再注入法(CART)について
近年では、抜いた腹水を濾過して再び点滴によって患者の体内に戻す「腹水濾過濃縮再注入法(CART)」という方法がよく実施されるようになりました。 腹水には栄養分が含まれていて、数リットルの単位で抜いてしまうと、一時的に症状は軽くなるものの、体力は低下します。 そこで、抜いた腹水の栄養分だけを濃縮させて、体内に戻すことで全身状態を保つことができるというものです

このことにより、腹水はタンパク質を含む体液が腹腔内に蓄積した状態をさすということを認識されてください。

通常、腹腔には20~50mlの水がありますが、病気などが原因でそのタンパク質を含む水が異常に増えてたまった状態を腹水貯留と呼びます。

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【腹水の種類】

大きく分けて2種類に大別できます。

●非炎症性腹水

肝硬変、うっ血性心不全、ネフローゼ症候群、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)などで起こる腹水がこのタイプで、血管内の水分が外に溢れ出した「漏出液(ろしゅつえき)」が腹水として腹腔内にたまります。

※漏出液がたまるメカニズムとしてさらに3つの要因に分かれます。
1.アルブミン不足
2.門脈圧の上昇
3.腎臓での水分の排出低下

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●炎症性腹水

各種消化器がんをはじめ、細菌性腹膜炎、急性膵炎、卵巣がん、子宮がんなどが原因で起こることが多く、炎症によって血管内の成分が溢れ出した「滲出液(しんしゅつえき)」が腹水として腹腔内に溜まるのが炎症性腹水です。

【近年における終末期医療のあり方の変革】

現在、我が国では約80%近くの人々が病院で亡くなるが、患者さんとそのご家族に、痛みや苦しみを和らげることを目的とするケアに変革された。
英国のホスピスを起源とした「人間の尊厳」、「QOLの向上」を重視した体に優しい緩和医療である。

近年の末期医療のあり方については、従来からの「延命措置の重視」から、病院における標準治療後の「身体と心の痛みを和らげる対応」、つまり全国的に「緩和ケア」(ホスピス)に重点が置かれるようになりつつある。

【終末期医療における漢方療法について】

このような背景の中で、心身をサポートする、苦痛からの回避など漢方療法実施には大いに意義があると思います。

但し、すべての症例について漢方療法が適しているということはなく、患者さんの病態や服薬コンプライアンス等を踏まえ、主治医と患者ご本人の事前相談無しでは漢方療法は難しいと考えます。

【腹水に対応して、分消湯や補気建中湯を用いた漢方療法】

現在、当店舗(東京都・青梅市)「薬のプロたん」においては、標準治療後に「緩和ケア」に移行されたご本人、もしくはご家族の方々(常に20人前後)が、漢方薬を求めにご来店されております。(完全予約制)

198-0052 東京都青梅市長淵5-543 平日のみ相談受付 10時~17時
駐車場は店舗裏手にあります。 電話 0428-25-8682

基本的には、医療用漢方製剤では取り扱っていない漢方処方の一般用漢方製剤、つまり第2類医薬品が中心となります。

腹水による苦痛緩和においては、多くの処方をご用意していますが、その中でも分消湯や補気建中湯のどちらかにされる症例が非常に多いと感じております。

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【分消湯 (ぶんしょうとう)は実証の方の浮腫・腹水(実腫)に】

●極めて優秀な処方で、浮腫を急激に取り除いても、体力低下を来さない実証に適した利水剤です。

●本処方は浮腫(あるいは腹水など)の初期で、腹および脈にはまだ力があるも、腹部の膨満感を訴える実証のむくみ(実腫)に用いると良い。

●体力が低下して虚証に陥らないうちに使用する。(虚腫には補気建中湯)

●浮腫には実腫と虚腫があり、「実腫は治りやすく、虚腫は治りにくい」と言われている。
実腫には弾力があって、圧迫した凹みが直ぐに元に戻る。逆に虚腫は戻らない。(虚腫には補気建中湯)。

●腹満、心下痞硬があり、小便はやや減少して濃縮し、大便も秘結する(便秘)ことが多い。
腹部膨満感は食後にひどく、腹が張って、ゲップや呑酸があり、少し食べても苦しくなる証に良い。

●胸脇苦満(きょうきょうくまん)があれば、小柴胡湯(しょうさいこうとう)と合方(がっぽう)する。肝硬変による腹水には、この合方が効果的と言われています。

分消湯【構成生薬】14味

(五苓散-桂皮)

白朮(びゃくじゅつ) 利水
茯苓(ぶくりょう) 利水
沢瀉(たくしゃ) 利水
猪苓(ちょれい) 利水

(平胃散-甘草、大棗)

蒼朮(そうじゅつ) 利水
生姜(しょうきょう) 健胃
厚朴(こうぼく) 理気、健胃
陳皮(ちんぴ) 理気、健胃

枳実(きじゅつ) 理気
香附子(こうぶし) 理気
木香(もっこう) 理気
縮砂(しゅくしゃ) 理気
大腹皮(だいふくひ) 理気
灯心草(とうしんそう) 理気

分消湯【作用機序】

五苓散(-桂皮)に平胃散(-甘草、大棗)を合方して、理気薬の枳実、香附子、木香、縮砂、大腹皮、灯心草を加えた処方です。
気をめぐらし、食物停滞を改善し、尿利をつけ、主に実証の浮腫を改善する。腹部膨満や腹水、全身浮腫などに用いられます。

分消湯【類方鑑別】

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■分消湯
元気がある方の浮腫・腹水(実腫)。実腫のファーストチョイス。

■補気建中湯
元気がない方の浮腫・腹水(虚腫)。虚腫のファーストチョイス。

■五苓散
小便の出が悪くむくむもの。ノドが渇いて水を飲むが、飲んだ以上に水分を吐く、腎臓の炎症による浮腫に小柴胡湯とよく合わせる。

■九味檳榔湯
二便(大便と小便)から水を除く。虚弱者にはあまり向かない。特に足の浮腫によい

【分消湯 (ぶんしょうとう)の漢方製剤】

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■分消湯エキス細粒G「コタロー」90包
■分消湯エキス細粒G「コタロー」500gボトル

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分消湯【製剤の概要】

分消湯エキス細粒G「コタロー」は、身体に水がたまって、むくんだり,腹部が張ったように感じる時に用いる漢方薬です。
そのような時に、西洋医学では腎臓にトラブルが起きていると考えて、一般的には利尿剤を用いて治療します。
このタイプの浮腫は、勢いがあって、圧迫した凹みがすぐ元に戻るもの(実腫)です。

むくんでいる時は、みぞおちがつかえて、大小便が少ない傾向にあり、少し食べても腹が張って苦しいという方に適しています。

分消湯【効能・効果】

体力中等度以上で、尿量が少なくて、ときにみぞおちがつかえて便秘の傾向のあるものの次の諸症:むくみ,排尿困難、腹部膨満感

 

 

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【補気建中湯 (ほきけんちゅうとう)は虚証の方の浮腫・腹水(虚腫)に】

 

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●本処方は浮腫(あるいは腹水など)で、腹部の膨満感を訴え、食欲不振かつ疲労倦怠を訴える方に用いるとよい。

●補気建中湯は実証の時期を過ぎ、慢性に経過した虚証や元気が衰えた方の浮腫・腹水に用います。

◎実証の浮腫は圧迫してもすぐに陥没が戻ることが多いが、虚証の浮腫は圧迫による陥没がなかなか戻らないことが多い。

◎なお実証のむくみ(実腫・腹水等)には主に「分消湯(ぶんしょうとう)」を用いることが多い。

●腹水を起こす疾患には、難治性の疾患(肝臓疾患:肝硬変症・肝臓癌等)やその末期に多いとしている。
補気建中湯で辛い腹水を除去、緩和し、患者QOLを高めることが期待できます。

(当店での応用について)
虚証タイプの浮腫・腹水・腹部膨満感、肝硬変症、慢性腎炎、癌から由来する胸水・腹水等

補気建中湯【構成生薬】9味

人参(にんじん) 補気健脾
白朮(びゃくじゅつ) 利水
茯苓(ぶくりょう) 利水
蒼朮(ちょれい) 利水
沢瀉(たくしゃ) 利水
黄芩(おうごん) 清熱燥湿
陳皮(ちんぴ) 理気化湿
厚朴(こうぼく) 理気化湿
麦門冬(ばくもんどう) 滋潤

補気建中湯【作用機序】

四君子湯と平胃散とを合方して甘草を去り、黄芩、沢瀉、麦門冬を加えたもので、中を補い小便を利する効果がある。
黄芩は内熱をとり、白朮、茯苓などの利水作用を助け、厚朴で気をめぐらす。

補気建中湯【類方鑑別】

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■補気建中湯(ほきけんちゅうとう)
四君子湯と平胃散の合方加減。元気がなく衰弱した方の利水薬。

■五苓散(ごれいさん)
小便の出が悪くむくむもの。ノドが渇いて水を飲むが、飲んだ以上に水分を吐く、腎臓の異常による浮腫に。

■八味丸(はちみがん)
腰から下が冷えて重だるく疲れやすい。冷えのため、夜間たびたびトイレに行くが、思うように出ない。

■六君子湯(りっくんしとう)
食欲がなく疲れやすい。食べると眠くなり、朝起きが悪い。胃腸が衰えて、下痢・軟便になりやすい。

【補気建中湯の漢方製剤】

■補気建中湯エキス細粒G「コタロー」90包
■補気建中湯エキス細粒G「コタロー」500gボトル

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補気建中湯【製剤の概要】

多くはお腹や全身に溜まった水(漢方でいう水毒)の治療に使用される漢方薬です。
水液代謝の異常である腹部や全身に溜まった水には、元気な時期では西洋医学の利尿薬を用いることができますが、元気が衰え虚弱になったものには、あまり適していません。
そのような時に用いるのが補気建中湯です。
補気建中湯エキス細粒G「コタロー」は、体を補いながら余分に溜まったお腹や全身の水を取り除き、患者様のQOL(生活の質)を高めてくれる漢方薬です。

補気建中湯【効能・効果】

体力虚弱で、腸が弱いものの次の諸症:腹部膨満感、むくみ

※以上、簡単に申し述べましたが、ご不明な点ございましたら
遠慮なくご相談ください。プライバシーは必ず順守いたします。

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担当は、管理薬剤師 遠藤までご連絡ください。
「薬のプロたん」
平日のみ相談受付 10時~17時
電話 0428-25-8682


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