
■パニック障害と漢方■
最近、特に心療内科領域で話題になるのが、パニック障害です。
そのような「病名」は診療する側に都合の良いように命名されたとお思いですか?
実は、れっきとした病名です。
パニック障害
Panic disorder
PDとは、定期的なパニック発作に特徴付けられる不安障害の一種です。
パニック障害は、強い不安感を主な症状とする精神疾患のひとつとして、不安神経症と呼ばれていた疾患の一部です。
かつては全般性不安障害とともに不安神経症と呼ばれていましたが、1992年には世界保健機関(WHO)の国際疾病分類によって独立した病名として登録されました。
特に、イマジネーションが豊かで感受性の高い方に多いですね。
男女区別はありません。当店では芸術派志向のお客様に多いと思いました。
例えば、地下街、ショッピングモール、混み合った地下鉄、高層ビル、急行電車、白熱した会議、群衆の中での試合観戦などの環境に置かれた場合・・・
脳が幻の危機を感じてパニック状態が起こる病気です。
例えば、顧客様も・・・
大都会、高速道路の大渋滞、今、災害が起きたら・・・。
少なからずも「不安」をご経験をされているかも知れません。
パニック障害は、その「不安観念」が強くかつ断続的に起こる疾病です。
パニック障害の症状には個人差はありますが、共通して言えることは、心拍、呼吸数上昇、発汗、胃痛、頭痛、めまい等です。
かなり激しく症状が出ますが、直接的に生命への危険性はありません。
しかし、これが慢性化してくると、環境への恐怖による回避、周囲との順応に支障をきたす心理状態に陥ります。
お仕事を持たれ、繁忙の時期になればなおさらのこと、業務内容や同僚とのチームワークへの影響も考えねばなりません。
さらに大切なこと、ご家族の「相互理解」が必要なことは言うまでもありません。
家族のリーダー、又は一員としての責任はもちろんあります。しかし決して無理をしてはいけません。
当人のプライドもありますが、決して恥ずべきことではなく、誰でも人生の中で少なからず1度や2度は体験することですので、互いによく話し合い理解し合う「場」が必要と思います。
ところが、独身族の場合。かなり進行している症例に出遭うことが多いと思います。
環境的には故郷を離れ、都会で単身働かれているヤングの方。又は家族と離れ、長期の単身赴任で勤務地を転々とされている管理職の方など、友人や同僚にも相談できず悶々とした日々を送られ、当店を訪問されるケースが多いと思います。
病院においては向精神薬による治療が主体となりますが、なかなか奏功してこないのが現状のようです。
その証拠に、当店の漢方相談では年を追ってこの疾病のご相談が急上昇しております。
【パニック障害に陥りやすいタイプ】あくまでも経験論的私見。
パニック障害を有する方は体質的に、心身ともにデリケートな方がほとんどで、環境変化にも非常に敏感なことが大きな特徴です。
例えば春先は花粉症(荊芥連翹湯の証)。
寒冷期にはアトピーや蕁麻疹(柴胡清肝湯や温清飲の証)。
真夏には水毒症や夏風邪、下痢ピー等によるダウン。(かっ香正気散の証)などなど・・・まさに千変万化。
平素は多感でテンションの起伏激しく、雨天や台風など気圧の変動に頭痛を覚え、ストレスは倍化し過敏性大腸や頻尿にも陥りやすい。。
常に現状に疑問を感じ、それを是正しようと努力するも空回りしさらにストレスがストレスを呼ぶ。
根が几帳面。
ある意味完全主義者。
仕事内容は決して派手ではないが、極めて緻密、繊細、業務の流れや文書の組み立てにこだわり、発想や企画アイデア等も豊か。
世情に敏感に反応し情報力も抜群であり、組織からは重宝がられる。
ところがいざ実行するとなると慎重がゆえ緊張が増幅し、例え成功するも決して妥協せず不満と後悔、大きなストレスだけが残る。
肩こり首筋パンパン。
腹部は膨満を認め、下痢と便秘の繰り返し、OAなど扱いは優れているが、目が弱く眼精疲労で充血。
本来血圧の数値は正常値であるはずが、時には心因性高血圧の傾向。
慢性的に胸部圧迫感を覚え、特に胸から脇(季肋下)にかけて充満した状態(つっぱり感)も継続している・・・。
周囲に常に気を配り、人を気遣い周囲からの評価や支えはむしろ高いはずなのに、なぜか自身は常に孤独と決め込み、一人して夜空の月を眺めては感動し、流れ星で涙するなどロマンチストな一面もある。いろいろと書きましたが、気に障ったらお許しください。
24年間、数万人と接客して得た感想からパニック障害に陥りやすいタイプの特徴の一部を率直に記載しました。
【当店舗で対応する漢方処方】
一般的な不安神経症に用いられる「半夏厚朴湯」の継続投薬でかなりの改善を得られるものの、症状そのものがが強いため、どうしても当人としては端的な効果?としての実感が湧いてこないようです。
すると漢方は効かない?というマイナス観念も災いすることもありますね。
当店ではパニック障害でご相談された場合、その方の体質的なご質問をはじめ、既往歴、現在までの薬歴などを元に、処方を決定いたします。以前に病院で「パニック障害」と診断を下され、投薬歴がある方がほとんどですが、既に数ヶ月、いや数年を経過している事例も少なくなく、その症状も既に複雑化しているのが現状のようです。
従って単一的な処方ではなかなか対応できない部分もありますが、当初は後述するようにまずは一剤で投薬計画を進めて参ります。(ただし、便秘が強い場合、症状が極めて強い場合には併用薬剤が発生します。)
最近、多い初回投薬例としては、以下の処方が挙げられます。
■ 柴胡疎肝湯(さいこそかんとう)
※製剤は小太郎、松浦から発売されています。
※気の滞りを改善する代表処方である四逆散に川きゅう(せんきゅう)、青皮及び香附子を加え、気を巡らす働きが更に強化されています。肝気鬱結に用いる代表的な処方ですね。
■ 苓桂甘棗湯(りょうけいかんそうとう)
※小太郎から発売されています。
※精神不安のためヘソのあたりに動悸を感じ、それが時々胸中に突き上げてきたり、お腹がはり、胸やノドが塞がって苦しくなる。このような突発的な発作が過ぎてしまうと、何もなかったように普通の状態に戻る。つまり自律神経がバランスを崩して、このようなとりとめのない精神的なトラブルに襲われた時に服用していただく処方です。
■茯苓飲合半夏厚朴湯(ぶくりょういんごうはんげこうぼくとう)
※あきらかに「半夏厚朴湯」の証の方であれば、つまり、性格的に几帳面で平素から不安症の方。周囲に気をつかうため、周りからは喜ばれますが、ご本人はクタクタになり、自己破壊のタイプ。
※製剤については、医療用漢方製剤にて存在いたします。近医に通われているお客様でしたら、担当医にご相談されるのが宜しいと思います。そうではなく、当店の製剤で試したいというお客様の場合、残念ながら一般用としてこの処方は私が知る限りではありません。そこで以下の漢方錠剤タイプ2種で対応しています。都合が良い事に、錠剤で服用量の調整が可能です。
※製剤のメーカーは一元製薬です。
※上記、2つを同時にお求めになられ、具体的には3錠ずつ、1日3回、食前又は食間に服用いたします。
又は茯苓飲を3錠、半夏厚朴湯を5錠で。
◎もともと茯苓飲は駆水剤そのものなのですが、半夏厚朴湯との合剤により、胃のすっきり感、頭痛、めまい感の改善など
併せもつさらなる優秀処方です。相乗効果と言えましょう。例えば服用している患者の声として、胃腸がすっきりする感じ。胸の痞え感がとれた。半夏厚朴湯は前から飲んでいたが、茯苓飲を3錠追加しただけで全然前よりも効いてきた。。との感想を頂いています。
さて最後になって恐縮ですが、実は以下の製剤ウチダのNP34番(エキス細粒剤)が近年当店舗におけるパニック障害やそれに類似する症例への主流の対応製剤として近年なりつつあります。
原典処方は柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)です。
平素お話をしている略称:ウチダの34番。。という製品です。
■ウチダNP34番 竜化順清(りゅうかじゅんせい)エキス細粒
原典処方:柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
※これはかなりパニック障害が慢性化されてお悩みの方におすすめしています。
通院されて何年も向精神薬を続けているが、今、ひとつ効果がみられない。
むしろ病院の神経用剤の長期投薬の副作用をも心配されている。などのパターンです。
症状としては、上記延べてきた症状に、心身的過労、不眠、血圧上昇下降を繰り返す傾向などが加わっているケースです。
※竜化順清(りゅうかじゅんせい)エキス細粒300包(ウチダNP34番)の原典処方は著名な柴胡加竜骨牡蛎湯から由来しています。各漢方メーカーの漢方処方シリーズの中では、必ずと言っても良いほど繁用の方剤として君臨していますが、24年間私の数多くの接客経験から、一番のリピート率の高い製品がウチダNP34番竜化順清エキス細粒です。特にウチダ和漢薬だけをひいきにするつもりは毛頭ありませんが、とにかくお客様方の支持が強いですね。
※当店では、柴胡加竜骨牡蠣湯の処方は、他に松浦、三和生薬、一元製薬、剤衰堂などのメーカーのも取り扱っています。
34番使用事例
20年以上当製剤をプロたん店舗にてご紹介しておりますので、使用事例が膨大ではありますが、特に記憶に残る最近の著効例を
当人様のご了解を得て掲載させていただきます。
【34番エピソード1】洋品店自営 女性(当店来訪当時49歳)
かなりの重篤な症例です。本来、一時入院の話がドクターからアドバイスされていた女性店長さんがこの34番に救われました。
とてもお美しい方です。。汗
もともと大手デパートの営業ウーマンとして活躍し、服飾関係に精通したプロ中のプロです。
47の時に奮起して独立開業した頃、ご家族が突然交通事故にて他界されるというご不幸に遭遇しました。
以来、不眠、過労が続き、自動車の騒音がいつまでも耳に残り、クラクションの音で全身が震えるなどの症状が続いたとのことです。
一時は現在の仕事を断念し、お店の閉店も考えましたが、強い信念をもって頑張られたとのこと。
ようやく仕事も軌道に乗ってきた頃、再び街を歩いていて当時を思い出し、強い焦燥感に襲われ倒れるなど。
最寄の病院へ救急搬送されることが何度か遭ったそうです。
仕事が多忙になるにつれて、不眠が再発し、手の震顫、食欲不振な割には逆に浮腫が出て、体重増加。血圧上昇。
このままでは、お客様や従業員の手前、まずいと判断し近医(心療内科)を受診。
ところが薬が合わず、翌日から皮膚の薬疹と伴に吐き気や、以前にも増して強い焦燥観念に襲われるという苦い経験をお持ちです。
結局、その後は病院を転々と受診し、最終的には新薬が合わないのならばと医療用漢方製剤を医師から勧められ服用。
その頃から漢方そのものに興味を持ち、書籍を購入して薬膳料理を家庭で作るなど、現在に至ります。
少しでも効果があるなら、今の状況から脱却したいと、当店へ人のご紹介でご来店されました。
この時に私が推奨したのがウチダの34番と牛黄製剤(当初は牛龍黄で、現在は牛黄カプセル)の併用でした。
あれから1年。
現在はとてもお元気で、お仕事をされております。
以前と違うことは、神経質な性分は変えることはできないが、夜はぐっすり眠れるようになった。と。
接客していても振るえが出ることもなく、自然に仕事ができるようになった。
お店の営業時間も思い切って短縮し、早朝は愛犬とウォーキングを日々実施できるようになった。
血圧は安定し、仕事への視点が変わった。頑張りすぎない。。
など数多くの改善点があるようです。この場合には、竜化順清を単独投与でじっくりと服用をおすすめしています。製剤のベースとなる柴胡加竜骨牡蛎湯はその構成生薬から多方面に効果を発揮するため、前述のように当初からはあれこれと複合的に他の製剤は推奨いたしません。
1ヶ月服用し様子をみてから必要に応じ、他処方をあくまでも臨時処方(短期)として紹介します。(その時、その時の併用事例として、牛龍黄、牛黄カプセル、甘麦大棗湯、香蘇散、腎臓仙、生脈宝A、霊芝エキス・・・などが当店では多いと思います。)
ただ、主剤はあくまでも竜化順清と決めた場合には、併用剤数は極力増やさずに最後まで竜化順清と根気よく続けて頂き、改善したと認めてもいきなり投薬中止にせず、時間をかけながらフェードアウトする形で廃薬とします。
【34番エピソード2】大手スーパー社員 女性(当店来訪当時19歳)
近年では「ネット見ました。ウチダの34番を・・。」と、初めてご来店されるお客様から告げられ、当方も面食らうシーンも最近多くなりました。おいおい・・処方アドバイスをする前に・・それが必要かどうかを判断するのは薬剤師の私、・・と正直思うのでありますが。。よくよく伺ってみると過去は病院で医療用の「柴胡加竜骨牡蛎湯」を服用しており、その後は他社メーカーの同処方を転々と・・。
なるほど、丁 宗鉄先生のベストセラー著書「最新 漢方実用全書」など持参し、素人ながらも漢方について熱心に勉強されているお若いお嬢様。
いろいろ尋ねてみると、まさに柴胡加竜骨牡蛎湯が適証かも知れませんね。なんと、高校時代に生徒会会長をしている時に精神的な一大アクシデントがあり、それを機に発症。
近医では「パニック障害」と診断。卒業後は再発、小康、再発と繰り返し就職は諦めていた矢先、漢方と出会いました。一般的に年齢的にも疾病を考慮すると、親同伴での相談事例が多いのですが、彼女、当店には全くの予約無しで単身でやってきました。
珍しいほどしっかりされていて、驚きました。
当人には失礼にあたるので、言わなかったのですが、弊社でも欲しくなるほどの貴重な人材ではなかろうかと。。
嫁入り前に自宅で家事手伝い。親にもこれ以上迷惑かけたくないとして漢方薬代を稼ぐために近隣のスーパーにパート社員として勤務したいとか。。いやはや、立派な心がけです。
こうなると、商売抜きで応援したくなるのも人情というもので。。感動した当方の田中店長がそのスーパーに同行し、親の了解のもとに身元保証人になったとか・・。後日談があります。汗
あれから2年が経過しましたが、時折突発的に起きる焦燥感に苦しみながらもタイムリーに牛黄カプセル併用などで難局を乗り切り、現在では症状もすっかりと改善しました。
その後は、その頑張りぶりが会社側から認められ正式に本社員として登用されたそうです。現在では文具売り場のコーディネーター兼責任者として活躍しているそうです。
過日は母親の更年期障害をひどく心配し、お母様と同伴で当店に来店。良い煎じ薬をお母さんにプレゼントしたいそうです。まぁなんて孝行娘なことか・・ここだけの話し、当方の娘にも聞かせてやりたいですなぁ~。苦笑
「どお、その後は彼氏できた?」と聞くと、私にムッとした顔して、仕事が楽しく、忙しすぎてそれどころじゃあ~ありません。。(笑)・・という返事。おいおいマジか?!。。器量良しの娘だけに今度は孫(まご)感覚で心配になってきた。これもある意味漢方パワー34番の産物なのか、複雑な心境です。
竜化順清、つまりウチダ和漢薬のNP細粒シリーズの高品質さは、従来からくどいほど私が絶賛しておりますが、当処方はその代表ともなる人気処方ですね。
素材も秀逸であり、漢方調剤薬局では汎用となっていると同業の友人らから聞きました。
【まとめ】
パニック障害は性格的なものからも起因するが、必ず漢方で改善いたします。
繊細、かつインテリな方ほどなりやすい疾病と言われています。
漢方による穏やかな周辺症状や焦燥観念が緩和されるだけでも随分と当人が苦しい状況から開放されます。
根気よく漢方をお続けになれば光明が見える。諦めないで頂きたい。
以上、パニック障害の漢方事例を一部ご紹介いたしましたが、その症状は個々に違い、また年を追って証にも変化があります。当処方に限局することなく、他に多くの漢方がこのパニック障害に対応できるはずです。
あくまでも、プロたん的な事例としてご理解を頂けますと幸いです。
(2014年12月6日 加筆修正 腑侶鍛 Mari J.)
2011年9月15日 初稿
2014年7月12日 更新
2014年12月6日 更新
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有限会社プロドラッグ
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