「薬は5種類まで 中高年の賢い薬の飲み方 (PHP新書) 」を読んでみた。
本書は、中高年から高齢者によく見られる薬の飲み合わせから来る副作用を実例をあげて紹介している。どこにである内容の書籍である。
しかし、東大医学部の教授が老年病学の立場で見た、現状の病院医療への警鐘ともとれる「薬は5種類まで」と限局したテーマであることが極めて異例の本。
「年だから」と思われがちな物忘れや認知症、転倒なども、薬の飲みすぎによる弊害かもしれない・・というくだりは、確かに頷ける。
服用している胃酸分泌抑制剤が認知症を早めることもあるという現場の状況を真摯に執筆されているのが驚きであった。
とても生意気な言い方であるが、薬剤師はこれらの件に付き、例え処方せんがきたとして、処方医に疑義は申し立てることができるであろうか。
調剤薬局の友人に聞いてみたら、あくまでも患者の現在の状態、投薬内容により、不明な点あらば、疑義というよりは確認の意味で、医師への連絡は必ずするとの回答があった。
本書では薬を減らすために今日からできる具体的方法から、薬のいらない生活習慣のつくり方、さらには医者との上手なつきあい方まで、網羅されている。
要点を簡潔にまとめられた新書: 204ページであるが、内容はかなり濃いと感じた。
もちろん中高年が読者の対象となり、「診療所は同じ曜日の同じ先生にかかる」とか、「看板に書かれている診療科の順番で選ぶ」など仔細な面でのアドバイスも微笑ましい。
ご家庭における薬の管理方法についても、こと細かく収載されているので、実に具体的と思った。
但し、一点。現在の病院医療(老年医療)において、例えば、脳梗塞後遺症、高血圧症、糖尿病、脂質代謝異常、不眠傾向など合併している症例が実に多く、
剤数は5種は遙かに超える事例が多いのも周知の通りである。
現在、コンプライアンスからアドヒアランス※と言われているが、それらの背景も意識しての執筆と思う。
漢方薬の世界には全く関係のないような話に聞こえるが、現在の当店は、果たしてどうだろうか?と考えさせられたものである。
(2016年11月 店主)

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参考
※アドヒアランスとは、患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けることを意味する。
従来、医療者は「医療者の指示に患者がどの程度従うか」というコンプライアンス概念のもと患者を評価してきた。
したがってその評価は医療者側に偏り、医薬品の服用を規則正しく守らない「ノンコンプライアンス」の問題は患者側にあると強調されていた。
しかし実際の医療現場では、コンプライアンス概念で乗り越えられない治療成功への壁が存在した。
そこで、患者自身の治療への積極的な参加(執着心:adherence)が治療成功の鍵であるとの考え、つまり「患者は治療に従順であるべき」という患者像から脱するアドヒアランス概念が生まれた。
このアドヒアランスを規定するものは治療内容、患者側因子、医療者側因子、患者・医療者の相互関係という点でコンプライアンスとは大きく異なる。
例えば服薬アドヒアランスを良好に維持するためには、その治療法は患者にとって実行可能か、服薬を妨げる因子があるとすればそれは何か、それを解決するためには何が必要かなどを医療者が患者とともに考え、相談の上決定していく必要がある。
(出典:公益社団法人 日本薬学会)