いまさら聞けない「逆流性食道炎」と漢方療法
いつも有難うございます。
本日のテーマは「逆流性食道炎」です。当症例は年々増加はしております。漢方医学でいう「脾内停水」「呑酸」など、水毒が元凶の「証」ですね。
【逆流性食道炎とは?】
逆流性食道炎とは、主に胃酸。稀に十二指腸液が、食道に逆流することで、食道の粘膜を刺激し粘膜にびらんや
炎症を引きおこす疾患名をさします。その昔は単なる「食道炎」として診断されていました。しかし近年では専門医による診断、内視鏡など医療の進化により、未治療の逆流性食道炎は狭心症よりもQOLを損なう疾患と既に位置付けられています。
つまり胃酸関連疾患の中で非常に重要な疾患であり、重症時の合併症として、食道出血、食道狭窄、食道癌が挙げられます
【発症原因について筆頭は加齢と肥満】
胃と食道との接合部には、食道内に胃内容物が逆流することのないよう、下部食道括約筋(LES)などの流防止機構があります。しかし加齢による下部食道括約筋の働きの低下と食道自体のぜん動運動と唾液の減少、食道裂孔ヘルニアによる逆流防止機構の破壊、腹圧の上昇などによる胃内圧の上昇などの要因により、逆流しやすくなります。
※腹圧の上昇の原因として、中年過ぎの肥満が該当します。
※要注意 ビール腹。
【食事から原因することも非常に多い】
●食事・生活様式は胃食道逆流症と大きく関わります。
●まずは刺激物としてアルコールと喫煙が筆頭。
●次に食事の欧米化により、高脂肪、高ショ糖分、炭酸飲料、柑橘類、香辛料などの過剰摂取が挙げられる。
●なお、仕事環境、職業病的な要因も考えられる「前屈位」。
例えば当店は青梅市と言うローカル地域のため、農業人口(畑・水田)が多い。
市民の平均年齢も高く、逆流性食道炎の症例が非常に多い。
また、個人的な習慣として食後すぐに横になることなどは腹圧の上昇を招き、高齢者にとっては逆流の増悪因子となることは必須となる。
【傾向と対策】
生活習慣と加齢から発症する傾向が大のため、以下のように生活習慣を変える
よう心がけることが肝要です。
●寝る直前に食事を取らない。
※寝る前に、毎晩アイスクリームを食べるクセのあるご婦人がいました。(し好物?)
※仕事の関係で、夜遅くにどうしても食事するお若い方。(食道炎の予備軍)
●脂質の多い食事、糖分の過剰摂取は症状を悪くするため、献立の見直し。
※独身者に多いのですが、どうしても「濃い食事」になりがち。
※外食が多いと、どうしても脂質分(揚げ物など)過多に陥ります。
●肥満や内臓脂肪沈着による腹囲増加が症状を悪化させる傾向があります。
※定期的にウォーキングを実施。運動を生活サイクルに取り入れる。
●身体の左側を下にして寝ると胃袋が食道よりも下になるので逆流が防げる。
【病院での治療と薬物療法】
●胃酸の分泌を抑制する薬物療法が中心になります。
胸焼けなどの症状があるのに内視鏡検査で異常が見られない場合などは、逆流性食道炎の治療に使われるプロトンポンプ阻害薬(PPI)が用いられます。
●PPI(ピーピーアイ)は、プロトンポンプ・インヒビターの略称で、もはや『私、今はピーピーアイを飲んでるの。。』と家庭内でも繁用される病院薬の用語になりました。覚えておくと、話がよく通じます。(笑)
具体的にはパリエット、ネキシウムなどが該当します。一定期間(主に8週間)、投与して医師が様子をみます。
●また、併用薬物として、よく一緒に食道のぜん動運動を活発化させるガスモチンやガナトンなども処方されることも多いのです。
【胸の痛みで救急で運ばれる人が多くなった昨今】
逆流性食道炎は悪化すると胸に独特の痛みが走ります。(個人差があるが、チクチク感というのが多い)また、狭心症の場合も私の体験からやはり同じような痛みを発します。つまり、食道からなのか、心臓系からの痛みなのか、またはぜん息系からの由来なのか、決して素人判断はせずに、心電図やCTなどの検査を優先し病院に早めに受診されてください。
また近年における心筋梗塞は激増していますが、いきなり心臓に来る発作は待ったなしで救急搬送が常識ですが、
人によっては「じわじわと発作」のパターンがあります。従って、胸部の痛みは、必ずしも「食道の炎症」に由来する痛みだけではないと認識ください。循環器系からも由来しますので、素人判断と思い込みは禁物です。
本年の出来事、店長田中の知人が、左の奥歯が痛く、顎と首あたりに麻痺感があると、電話連絡をしてきました。『ひょっとして、逆流性食道炎かしら?』との本人の弁でしたが、店長が大至急、市民病院・循環器を受診する旨、指示しました。
これが的中し、冠動脈は大きく分けて「左前下行枝」「左回旋枝」「右冠動脈」の3本存在しますが、うち1本が狭窄して閉塞寸前でした。緊急のバイパス術で一命をとりとめました。(65歳女性)
【逆流性食道炎と漢方療法】
脾胃に効果ある方剤は多くあります。中焦健和の半夏瀉心湯。脾内停水、気虚、気鬱など安中散、平胃散など多く使用されます。
例え病院で「逆流性食道炎」と診断を下されたとしても漢方医学の世界では、あくまでも個別の「証」により方剤が決定します。つまり漢方の世界は、病名ではなく、体質と現在の「証」から入っていきます。
あれっ?「証(しょう)」って体質のことではないのでしょうか?と、ご質問されることがあります。
もちろん「証」はその方、個別の体質も含まれます。但し、実証、虚証、とは別に日本の漢方では「中等度」とか分けられますが、現在ではどうなのか?をも考察しなければなりません。当店では一般的に実証タイプ向きの漢方と言われている方剤も虚証の方に一時的に処方することもあります。本来は実証タイプの体質のはずではあるが、疾病を患い、どちらかというと現時点では「虚」の状態・・という症例もあります。又はその逆もあります。
停水顕著で呑酸の傾向であれば「枳実」きじつという生薬が配合されている処方が良いでしょう。
さて、これが慢性疾患で胃炎も併発している場合はどうでしょうか?
これはなかなか治癒するのが困難です。最も病院で処方されるPPI(ピーピーアイ)でも全く改善されないわけですから、一筋縄ではいかない。当店では、このような場合3つの処方の選択肢があります。
体力中等度以下で,胃腸が弱く,食欲がなく,みぞおちがつかえ,疲れやすく,貧血性で手足が冷えやすいものの次の諸症:胃炎,胃腸虚弱,胃下垂,消化不良,食欲不振,胃痛,嘔吐

体力中等度以下で,気分が沈みがちで頭が重く,胃腸が弱く,食欲がなく,みぞおちがつかえて疲れやすく,貧血性で手足が冷えやすいものの次の諸症:胃炎,胃腸虚弱,胃下垂,消化不良,食欲不振,胃痛,嘔吐

体力中等度以下で,神経質であり,胃腸が弱くみぞおちがつかえ,食欲不振,腹痛,貧血,冷え症の傾向のあるものの次の諸症:胃炎,神経性胃炎,胃痛,胃腸虚弱,胃下垂,消化不良,食欲不振,嘔吐

【弘真胃腸薬S(こうしんいちょうやく)缶入りタイプ255g】
※上記の方剤以外において、個別の「証」が今一つはっきりしない場合、以下の漢方胃腸薬を推奨することがあります。特に缶入りの粉末タイプが逆流性食道炎に実に効果的であることをここ15年間の推移で確認しております。
胃痛,胸やけ,胃酸過多,胸つかえ,胃弱,食欲不振(食欲減退),げっぷ(おくび),胃部・腹部膨満感,消化不良,胃部不快感,胃重,食べ過ぎ,飲み過ぎ,もたれ(胃もたれ),吐き気(むかつき,胃のむかつき,二日酔・悪酔のむかつき,嘔気,悪心),嘔吐
